11 けいおん! ~「けいおん!」ヒットの裏側と桜高ミステリー~
前回の記事を更新した後、少し燃え尽き症候群を体験したナナシです。
そして驚いた事に当ブログのアクセス回数の総数が300を超えました。
けいおん!
まとめて買い揃えた。
「けいおん!」と言ったらキャラソンがCD市場トップを独占したり、キャラクター電車が走ったり、近江鉄道ではアニメ第二期放送記念の乗車チケットが販売されたりと結構社会現象巻き起こした作品だが、その割には漫画の方はあっさり終わっている不思議。
登場人物
=放課後ティータイム(HTT)のメンバー。
今作の主人公。ギター兼ボーカル担当。聴いた曲を速攻でコピーしたりチューナー無しにチューニングしたりと音楽のセンスは抜群。ただし揮発性メモリー搭載。
端的に言ってめっちゃ好き。
唯一苗字が三文字。ドラマ担当。ある意味で現桜高軽音部の創設者。おでこを出す事にこだわりがある様子。
怪力たくあん。キーボード兼作曲担当。アニメだとかなり緩和されているが百合好き女子。池田千歳と同じタイプの百合好き女子。
最後まで名字を自力で思い出せなかった。ありがとう、Wikipedia
ベース兼作詞兼ツッコミ担当。極度のあがり症。作品内でファンクラブが設立されるほど女子からモテるタイプの女子。
アズキャット。ギター担当。唯一の下級生にして両親がジャズバンドをやっているというハイブレット、じゃないサラブレット。次代の軽音楽部部長。
あらすじ
ちょっとした勘違いから平沢唯が入部する事になり廃部を免れた軽音部。OGの山中さわ子を顧問に据え、ゼロから音楽活動を行なっていく。
けいおん!小噺
映画は興行収入10億超えるなど、社会現象を巻き起こしてきた「けいおん!」ですが「けいおん!」が影響を与えたのは社会にのみならず、同じ畑のきらら界にも。
きらら作品のオープニングでは大概登場人物が揃ってジャンプするシーンがあり、これを「きららジャンプ」と言ったりしますがその「きららジャンプ」が始めて出たのが「けいおん!」なのです。
そして今まで実に30作品以上のアニメが作られ、「きらら枠」なんて言葉が生まれるくらいきらら作品のアニメは歴史がありますが、その長い歴史の中でアニメ第二期「けいおん!!」だけが唯一無二の二クール連続放送。
だと言うのに原作コミックは結構アッサリ終わっています。月刊誌で単行本4巻と言うのが長いのか短いのか分かりませんが、「けいおん!」の翌年から連載が始まった例えば「キルミーベイべー」や「Aチャンネル」等がまだ連載中である事を考えると、やっぱりそんなに長い方じゃないんじゃないかな?
どうして「けいおん!」はヒットしたのか
とまあ大きな功績を残して来た「けいおん!」ですが、今回は題にもある通り、どうしてここまで「けいおん!」が流行ったのかを見ていきたいと思います。
と言うのも、「けいおん!」のコミックってそこまで評価が高くないんですよね、なんでか。ただよく考えてみるとそうなるのも納得の理由があるというか、とにかくこの点を中心に見ていきたいと思います。考察系ブログです。
あ、そうだ。根本的な所の話ですが、当ブログはきらら作品の「漫画」を扱うのでアニメの方には基本言及致しません。
ここで扱うのは基本全て漫画の話です。
そもそも「けいおん!」は何漫画?
考察する上で大切なのはそもそもこの作品がどのジャンルに属する作品となるか、この1点です。
普通に考えれば音楽ものの漫画でしょう。だってタイトルが「けいおん!(軽音)」だし。でも実際のところどうなのでしょう。
コミックは全四巻でそのうちちゃんと演奏しているシーンがあるのは全54話中18話。(私調べ)
これは…多い、のか? 多いのか?
途中で修学旅行に行っていたり大学受験期間に入っていたりするからそんなに少なくはないのではないでしょうか。ただ18話中の「ちゃんとしている演奏しているシーン」てのは基本どれも4コマか、もしくは1コマで収まるレベル。それを「ちゃんとした」と言って良いのか悩みものですが、それを除けば総数は半減どころの騒ぎではないので含むものとします。
桜高軽音部の主な活動場所は文化祭のステージですが、そのステージですら演奏の具体的な描写は皆無に等しく、また(これはきらら展での音声案内の情報なので記憶があやふやですが)原作のかきふらい先生は、
「バンドで演奏したり練習したりするシーンも大事だけど、それ以外の時間も大切でそういう漫画を描きたい」みたいな、もうほぼ私が脚色していると思いますがそのような事を言っていた様なのです。それは確か。
そうして生まれた作品が「けいおん!」なのなら、ハナからかきふらい先生は音楽に寄った漫画を描く気はなかったという事になりますよね。
だからここでは「けいおん!」は他のきらら作品に漏れない「日常系」の作品として扱う事とします。と言うか私はずっとそうだと思って読んでいました。
鶏の卵的理論
最近の漫画や小説がアニメなりドラマなり、要は映像化するのには相当の人気が必要ですよね。誰も知らない作品を映像化したって数字(視聴率はもちろん営利的なものも含めて)は望めないし。
それなら「けいおん!」も単行本が相当売れていたのか、と言えばそれはどうなのでしょう?
例えば「けいおん!」以外に「ひだまりスケッチ」や「Aチャンネル」。この両者は共にアニメ化しOVAも作られた現在も絶賛連載中の作品ですが、これらの作品どれも単行本2巻の巻末にアニメ化の報せがあるのです。
どれだけ売れていたってたったの2巻未満、話数で言えば10数話、連載日数でいえば1年ちょっとでアニメ化決定っていくらなんでも早すぎやしませんかね。
この頃のアニメ界隈の事情は知りませんが、思うにこの頃芳文社はきららを世の中に浸透させる事を何よりも1番に考えていたのではないのでしょうか。単行本や月刊誌よりもアニメの方が宣伝効果は遥かに高いでしょうし、「ひだまりスケッチ」はきららの黎明期を支えた作品なんて言われたりしますからね。
つまり「けいおん!」はコミックが売れたからアニメ化されたのではなく、アニメがヒットしたからコミックも売れた。と考える方がしっくりくるのです。
手元にある「けいおん!」コミック第1巻は第14刷で2009年6月10日に刷られた物です。そしてアニメ第1期が放送されたのはこれが刷られるより2ヶ月前の4月。アニメ放送までに何回刷られていたのかは知りませんが、少なくともアニメ放送後に大量に刷られたのは確かだと思います。
つまりアニメで知って原作を読み始めた人が沢山いる、という事です。
原作とアニメの違い
となると、原作の評価点に上がるのは「原作コミックとアニメとの相違点」、つまりどれだけアニメが原作に準拠して作られていたかという点です。そしてこの事は「けいおん!」を読み、そして見た人ならお分かり頂けるでしょうがこの2つには結構違いがあります。
例えば細かいところというか、これはしょうがない点ですが、アニメの方も原作と同じく日常シーンが多くその描写も細かいです。それこそ登場人物の心情を察する事ができるくらいに。ただ原作の方はこれ4コマ漫画ですから、ここにそう言った心理描写を求めるのは酷って物です。と思っていた時期もありましたが「NEW GAME!」とか読んでるとそうでもないのかな、と思ったり。
決定的に違うのはストーリーでしょう。
ストーリーの展開はそれほど差はありません。第1期も第2期も。ただものすごく肉付けされています。特に2期。
そりゃそうですよ。1期は原作コミックの1.2巻、2期は3.4巻を扱っています。同じだけの話数を振り当てられながら2期は2クール放送ですからね。アニオリ要素が強くなって然るべき話数です。
この「肉付け」と言うのがかなり要素として大きくて、例えるなら原作は東京から大阪まで新幹線で移動しているのにアニメの方だと東京から青春18きっぷを使って普通列車で大阪に行った、くらいの差。私的にはこの例えが1番しっくり来るのですがピンとこないかしら?
要は物語の骨格になる「起承転結」のうち「起」と「結」は相違ないが、「承」と「転」に大きな違いがある。より正確に言うなら密度に差がある、という事。口が悪いけどアニメと比べると原作スッカスカですからね。
どれだけ密度に差があるのか気になった人、ほぼ全話にかけてそうですので「dアニメストア」等「けいおん!」を見れるコンテンツで確認してみてください。
と、投げるものなんなので1期の1話を例に出しましょう。「起」と「結」に差はないので省略。
- 律と澪が職員室で山中先生から軽音部の現状を説明されるシーン。アニメだとそこに唯がやって来て山中先生から運ぶよう言わたプリントをその場で散乱。律に「唯(まだ名前を知らないが)=ドジっ子」とイメージ付けさせるのと同時にファーストエンカウントを果たしています。しかし原作だと唯は職員室には来ず、代わりに来たのは名も知らぬモブでした。
- 原作だと律たち「すでに入部している組」は新入部員として唯が来るという事を既に知っていましたが、アニメだと軽音部の面々に山中先生が入部希望者がいる事、その人の名前を伝えるシーンがあります。
- 唯が見ていた軽音部の部員募集ポスター。このポスターの製作過程が少しアニメにはあります。
- オカルト同好会という完全アニオリ部活(と言うか同好会)が登場します。
などなど。
パッと思い出せる限りを書いたので実際はもっとあるだろうし、書くに足らないものは省きました(アバンや部活の勧誘シーン等)。
書いてて思ったのがこれって「肉付け」と言うより「骨格補強」と言った方がしっくり来るかもしれない。
上の方にバンドを演奏しているシーンは少なめと書きましたがつまりアニメ中の演奏シーンはほぼアニオリです。だって原作にはHTTの楽曲って「ふわふわ時間」と「ごはんはおかず」と「U&I」だけですから、歌詞が作中出てくる楽曲は。つまりこれらの曲以外を演奏しているシーン、例えば梓が入部する事を決めた新入生歓迎会とか、澪のバースデーパーティーとか、唯&梓の隠し芸大会とか、文化祭全般とか。すべてアニオリ。驚いた事に「天使にふれたよ!」もアニオリなんですね。映画の軸になってるのにですよ。
ここら辺、「けいおん!」を音楽漫画だと思って読み始めた人はかなり違和感を感じるでしょうね。
辛口に言うと、原作はアニメと比べて演奏シーンが少なく、また日常描写も物足りないのです。
桜高はどこにある?
これは原作とアニメの根本的な設定の話ですが、アニメ1期のopにて唯、律、澪、紬の4人は賀茂川や南禅寺の水路閣に来ていますが、これらはどれも京都にあります。また、学校の最寄駅と思われる駅もモデルは叡山電車の通る駅、つまり京都にあります。
ところが桜高の3年生は修学旅行に京都に行ってるんですよね。しかも新幹線で。
京都にある学校が、修学旅行に新幹線を使って京都に行くっておかしいですよね。どこ迂回したのって話。
制作が京都アニメーションなので近場の京都から場所のモデルを探したのでしょうが(旧豊郷小学校等)、そのせいで決定的な矛盾が生じてしまった訳です。ここら辺、原作サイドの人たちとちゃんと話し合わなかったのかな?
だとすればこれ、京都アニメーション側に原作をリスペクトする意が一切なかったということでもあります。悪い言い方をすればただの金稼ぎのコンテンツとしてしか見ていなかった、という事。
だったらやっぱり原作とアニメは切り離して評価するべきですよ。
一応作中で唯たちがいる都道府県は県である。つまり都でも道でも府でもない事は示されています。
ついでにもう1個
2019/11/12追記
記事を見直しているついでに書き足しておくと、アニメ1期の新歓ライブの時に計4曲演奏しています。曲目は「ふわふわ時間」「カレーのちライス」「わたしの恋はホッチキス」そして「ふでペン〜ボールペン〜」の4曲。これらはすべて原作でタイトルは出てます。タイトルはね。
その後、梓が入部し行われた合宿。先に書いた通り演奏シーンはすべてアニオリなので合宿中の練習シーンも当然アニオリなのですが、その中で唯が上手く弾けず苦労していた曲は「ふでペン〜ボールペン〜」なのですが…。
お察しの良い皆様ならお気づきの通り「ふでペン〜ボールペン〜」は新歓ライブで弾いているんです。
これは原作との差というより単純にアニメ制作側の爪が甘かっただけの話です。
要するに…
ここまで書いて来た事をまとめると、
- アニメを見て原作を読み始めた人が多数(いるであろう)
- アニメと比べて原作は中身が薄い
- 決定的な設定の矛盾
つまりアニメから「けいおん!」を知った人は「何これ、こんなのけいおんじゃないよ」と拒否反応を示されても文句の言えない違いがアニメとはある訳です。
私の予想通り、当時芳文社がアニメによるきらら作品の普及を図っていたのならそれは大成功したと言っても良いでしょうが、その反作用というか、悪い面がもろにこの「けいおん!」には出て来てしまってるのではないでしょうか。原作の評価がそこまで高くない理由はまさにこれでしょう。アニメと切り離して読めば普通に面白いと思うんですけどねぇ。贔屓目かしら。
故に漫画「けいおん!」がヒットしたのはそれ単体の力と言うよりアニメの影響がとても大きいのは間違いないでしょうね。
一応言っておきますが、私は「けいおん!」はどちらも好きですからね。なんかアンチの様に思われていたらシャクなので言っておきますけど。
付録:「けいおん!」と「はるみねーしょん」
「けいおん!」の作者かきふらい先生と「はるみねーしょん」の作者大沖先生はかきふらい先生が同人活動をしていた頃から交流があるらしく、「けいおん!」の単行本には末に大沖先生の描き下ろしの4コマ漫画が載っていたり、「けいおん!」の作中に「はるみねーしょん」の主役である細野はるみと思われるキャラのグッズが出ていたりします。
私は気付きませんでしたが、もしかしたら「はるみねーしょん」の作中にもけいおんグッズが出ていたり…?
なんか懐かしくなったから追記
2019/11/05追記
今思い返せば私が初めて見た「けいおん!」て映画のポスターだった気がします。今は亡きファミリーブックの店内に貼られていました。実際に映画を見る前から「卒業旅行でロンドンに行く」という事はよく知っていたのはファミリーブックのポスターのせいでしょう。と言うかどんだけポスター見てたんだろう? 全く興味のない作品のポスター見てたんだろう何か注視しませんよね。「けいおん!」をよく知らない割に興味はあったんでしょうね。
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