39 がっこうぐらし!考察まとめ其の2〜「かれら」のメカニズムを解く〜
当記事を書くため「がっこうぐらし!」を頭から読んでいると惹かれる題材がもう1個できたため急遽前編中編後編の3部構成となってしまいました。
と自己肯定してみたり。書きたいことがあるって良いことだよね。
「かれら」とは?
学園生活部や自堕落同好会の生活を脅かす1番の天敵が作中「かれら」と呼ばれるゾンビのようなものです。
那酒沼由来のウイルス『Ω』に感染することで「かれら」に転化します。
「かれら」のメカニズムを解く
私が考察記事を書いていてふと思ったのが「『かれら』は何を目的に動いているんだろう?」ということ。
この点を考察してみたいと思います。
ここで「がっこうぐらし!」の「かれら」のメカニズムを解くにあたり、「ウォーキングデッド」の「ウォーカー」を参考にします。
「かれら」の能力をまとめる
とりあえず一度「かれら」の能力をまとめておきます。
「かれら」の行動原理を解く
いきなり本題に入りますが「かれら」は一体何を目的に動いているのでしょう?
こう思ったのには1つだけ理由があって、
私が「ウォーキングデッド」を見ていた
ウォーカーの行動原理は明確で食欲を満たすこの一点につきると思います。「ウォーキングデッド」は言わずと知れたホラーテイストの強いサバイバル物のドラマですが、このホラーの要素は特にシリーズの最初の方は「ウォーカー」によるシーンがとても多いのです。生きた人間や野生動物をむさぼる様はホラーとしか言いようがありません。
五体満足の「ウォーカー」もいますが中には手足が欠損していたり頭が陥没していたりと体の一部が大きく欠損した「ウォーカー」も数多く登場します。
「がっこうぐらし!」の作中の絵を撮るべくペラペラ流し読みをしていた時ふと思ったのが、
舞台が結構綺麗なんだよなぁ
確かに学校だって飛沫した血で壁や床が汚れていたりしていたので出血沙汰は起こっているんでしょうけど「かれら」が生きた人間に群がり「ウォーカー」のようにその人間たちを食べているシーンって漫画にもアニメにもなかったはずなんです。
「かれら」には食欲ってないんでしょうか?
(掲載紙が『きらら』だから、というメタ的な意見はここでは一度置き)
「かれら」に食欲はある?
ここで「かれら」に食欲があるのかどうかを考えるためにまず「かれら」に転化する流れを押さえておきましょう。実は結構少ないんですよ、転化シーン。
単行本2巻にある以下の一幕から。
放課後に立ち寄ったショッピングモールで外の異変に気付いた美紀と圭はエレベーターに乗り込もうとするもその中は既に「かれら」によって埋め尽くされていた。あわてて踵を返し、洋服屋の試着室に身を潜め、カーテンを捲り外の様子を伺う。そこに複数の「かれら」に囲まれ息絶え、そして「かれら」に転化した女性の姿が。
「かれら」に襲われている時の擬音が「ビリッ」「ジタバタ」そして「ガリッ」というのがポイント。順に「服を破る音」「抵抗する音」そして最後のが「『かれら』に噛まれた音」でしょう。つまり「かれら」は人を食べること以上に噛むことに固執しているように見えます。実際「かれら」に成って立ち上がった女性は五体満足で脇腹の部分が血で汚れていたくらい。その血も女性のものなのかはたまた「かれら」のものなのか・・・。
とにかく「かれら」に食欲はないというのは間違いないでしょう。
従来のΩに新しいΩ
「かれら」に食欲がないのならどうして「かれら」は人を噛み、攻撃をしてくるのでしょう?
ここでΩの感染経路を示しておきます。
1. 空気感染
聖イシドロス大学のコウガミや一人で籠城していた女性のラジオDJはこれによって「かれら」に転化しました
2. 接触感染
これは言わずもがな。
そして前回の記事にも書きましたが、
改めてΩのここで重要になってくる性質を上げておきます。
那酒沼由来のウイルスで沼の水にはΩの抗体が含まれている
なのでΩを空気感染させる場合は一度水と完全に分離する必要があります。
つまりΩは人の手によって改良を加えられている可能性があります。
というかそういう事を長々とこれまで書いてきたのでこれも当たり前のことなんですけどね。
ここで言いたいのは空気感染にしろ「かれら」による接触感染にしろこれらの感染経路は改良された結果、つまり天然のΩには存在しない能力である可能性があるということ。
ここで天然のΩをΩ、改良版新ΩをΩと色分けします。
「かれら」の「かれら」の見分け方
話は変わって単行本8巻より以下の一幕。
聖イシドロス大学を牛耳る過激派の一人タカシゲに体の異変に気付かれたくるみはその場を逃走。安全ではない大学敷地外に逃げ出す。深追いしたタカシゲはくるみによって呼び寄せられた「かれら」に食い殺されてしまう。
群れを成してやってきた「かれら」はくるみを素通りしてタカシゲの元に向かっています。問題なのはこの時「かれら」はどうしてくるみを見逃したのかということ。この点は読者はもちろん承知していることですが作中の学園生活部の面々以外の人は知る由もありません。これは「かれら」についてもおなじこと。
そしてタカシゲはくるみの異変を彼女の直接触れる事によって察しています。つまり見た目には「かれら」か否かの判断がついていないということです。くるみは冒頭少しだけ異音を発していますがその後は普通に会話もできているのでここから察することも不可能でしょう。匂いについては何とも言えません。
改めて「かれら」の五感について触れておくと確実に生きているのは目と耳。
この二つではくるみが「かれら」か否かを判断することができないということは上に書いた通りです。
つまり「かれら」には目や耳以外に対象の人間が「かれら」か否かを判断する手段を有しているということです。
この手段が「かれら」の行動原理と紐づいていると考えます。
「かれら」が求めているのはΩ
結論を示すと「かれら」はΩによる被害者を拡大するために動いているのでしょう。
くどいようですが大切な事なので何度も記しておきます。当ブログではΩは核に変わる新たな生物兵器として研究されていたと主張しています。
その為に
1. Ωの感染力を増している=空気感染に接触感染と感染経路を増やしている
2. 治療薬を用意している
3. 改良を加えるために実施調査を行っている
等を行っています。
「かれら」は一つ目の要素に該当します。空気感染により不特定多数の人間を「かれら」に転化した後「かれら」による接触感染によってさらに感染者を増やすといった具合。
くるみを見逃しタカシゲを見逃さなかったのは体内にΩを有するか否かの違いでしょう。空気感染の場合花粉症のように発現するのに固体による時間差があるようですが接触感染の場合だとΩに対する対抗がない限り誰でも一発でほぼ即座に転化します。
くるみはめぐねぇによる攻撃によって体内に「かれら」に転化する分のΩを体内に有していた。しかしΩに対する耐性を有していた為「かれら」に転化することなく常人にはみられない異常こそあれど普通に生活をすることが出来ていました。
つまり「かれら」にはΩが目に見えているのかもしれません。ちょうどサーモグラフィ映像で温度分布を色で判断できるように。
動く物体にΩがあるかないかを目で視て判断し、なければΩを体内に注入するために襲う。
これが「かれら」の基本的なルーティンなのでしょう。あくまでも目的は感染者を広げること。だから激しく体の一部を欠損した「かれら」もいないしショッピングモールでの一幕のように体を噛むことにこだわった行動を見せているのです。
つまりΩを研究していた科学者にとってΩの感染者もただの道具に過ぎなかったということでしょう。
そしてこれらの点について、ここまで原作の海法紀光先生が考えていたかどうかについてですが間違いなく考えていないでしょう。彼が単行本1巻巻末に感謝の意を示した者の中に「メアリー・シェリー」の名があります。この人の名前に聞き覚えがない人は多数いるでしょうが彼女の代表作は誰でも一度は耳にしたことがあるはずです。その名も「フランケンシュタイン」
作中天才科学者のフランケンシュタインは物に命を吹き込む術を見つけ出していますが、その具体的な手法について詳しい説明はありませんでした。当たり前です、物に命を吹き込むなんてそんなこと現実には叶いっこないでしょうから。そして具体的にどうやって物に命を吹き込むかの説明はありませんでしたがフランケンシュタインがその術を手にするまでの経緯はしっかり書かれています。
この点は「がっこうぐらし!」でも同じでしょう。
「かれら」の感染源やその出元がΩだということが分かる。対抗策も分かっている。けれどΩがどのようにして生まれたのか、Ωがどのように生き物を「かれら」に転化させているのか。この点は説明がありません。
説明がないのは考えていないのではなくあえてしていないのでしょう。この記事や他の考察のように想像を広げる余地を作り出すために。それは単行本最終巻の巻末にある海法紀光先生のコメントを見れば察することができます。
後編につづく
「がっこうぐらし!」最後の考察はΩ一切関係ありません。
好奇心を満たすその一点に注力した考察となります。
前編⇒Ωとの正しい付き合い方
後編⇒丈槍 由紀の生きざま